Super GT最終戦&NSXパレードラン(2)


Super GT最終戦&NSXパレードラン(1)の続きです。本記事の目的はCFDとの付き合い方についてです。

NSXのパレードランの後は、Super GTの決勝戦でした。GT300や500に参戦するマシンは、東京オートサロン等で展示されることも多く、比較的目にする機会が多いと思いますが、本会場でもLexus LC500とHonda NSXのGT500車両の展示がありました。

名前と外見は、市販車と同一に見えますが、2台ともGT500の共通カーボンモノコックに市販車に似ている外装を装着した全くの別物。別物である故に、一般車では応用不可な様々な空力、排熱の処理が行われています。

これらの空力処理は、カーボンモノコックの形状あってこそ可能であり、その意匠は、最近では、数値流体力学(CFD)と呼ばれる数値シミュレーションや風洞実験による検証に基づくことも多いです。

Flowsquare+は、CFDソフトの1つですが、どのようなCFDソフトを活用する場合でも、CFDを設計開発等に効果的に活用するには、CFDとの付き合い方やそれらの受け取り方を考える必要があります。

良くあるのですが、根拠なく全てのCFD結果が正しいと思いこんだり、逆に実験値と異なるからといってCFDソフトが間違っているというような短絡的な決断を下す、というような光景を見たことがあります。このような判断がなぜ誤りであると考えられるのか、ご説明したいと思います。

まず、世の中のCFDソフトのほぼ全ては、流体を支配する輸送方程式に、時間平均処理を施した基礎方程式を解くRANSと呼ばれる手法を採用しています。近年になって、実際の流体物理により近い、粗視化された非定常場も考慮可能なLESと呼ばれる手法を採用するCFDツールも市場に出てきています。 Flowsquare+ もLESと呼ばれる手法に基づきます。

ここで、まず、RANSであってもLESであっても、用いた基礎方程式以上の情報は得られません。RANSでは、シミュレーション結果は平均場であるため、実現象が変動する場合でもその時間平均場しか得られません。LESでは、粗視化に用いるフィルタ(メッシュ)サイズ以下の現象はシミュレーション結果では現れません。

※ただし、RANSやLESでは、解に現れない直接考慮不可能な流体現象は、物理モデルを用いて陰的に考慮しているケースが多いです。

また、RANSやLESの基礎方程式は、共に非線形偏微分方程式です。偏微分方程式は、同じ式でも初期条件や境界条件が異なると得られる解が全く異なります。従って、流体実験を再現するためのCFDを実施する際、実験で用いた正しい条件をCFDの境界条件として与えることができなければ、CFDで得られる解は、実験結果を再現しないでしょう。

例えば、CFDで風洞実験を再現する場合、風洞実験の流速が10 (m/s)であるという情報のみから、その値を平均流体速度としてCFDの境界条件に与えるのは間違いかもしれません。というのは、壁に挟まれた風洞の場合、壁では流速ゼロ、風洞中央部で最大流速となり、この10(m/s)が、バルクの流速(体積流量を風洞の断面積で割ったもの)なのか、それとも風洞中央部の最大流速の時間平均値なのかで境界条件が大きく異なるからです。

風洞実験は比較的単純で、条件設定もよく定義される部類に入りますが、CFDで再現したい実験は、さらに条件設定は定義しづらいケースもあります。例えば都市環境や、室内空調等の計測です。このような場合、CFDでは厳密に境界条件を設定する必要がある一方、実験の各種条件(エアコンの風量、風速、変動速度等)はかなり曖昧で、そのような条件においてCFDと計測の1:1の単純比較は不可能です。

CFDを用いて多くの成果を出している企業や開発グループで、最も大事にされているのが、はっきりとしない条件に基づく実験値と境界条件にシビアなCFD結果を『つなぐ』ための係数や、多変数のマッピング等のツール(経験)です。多くのCFD結果及び計測結果に基づいて、このようなツールが得られるわけですが、このツール自体には高度なプログラミングが必ずしも必要であるわけではなく、多くの場合、単純なエクセルシートであったりします。

しかし、一旦このようなツールが完成すると、エンジニアは、CFDの結果を鵜呑みにすることなく、CFD結果をツールを通じて観察することで現象を真に理解し、効果的にCFDを活用した設計・開発が可能となります。

上記は、CFDを上手く活用するうえで重要な一つの側面ですが、オープンソースのCFDツールから、市販の数100万円クラスのCFDツールまで多かれ少なかれ当てはまります。また、これ以外にもCFDで用いられている物理モデルの精度や、RANS・LES手法による得手不得手、解像度、数値手法など、CFDには様々な要因が関係してきます。Flowsquare+の開発元であるNora Scientificでは、CFDを効果的に活用するための多くのノウハウや洞察を蓄積しており、技術相談等を通じてこれらをお伝えすることが可能です。お気軽にお問い合わせください。


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